シアター・オリンピックスについて
開催概要
第9回シアター・オリンピックス
日本/ロシア共同開催
テーマ Creating Bridges
日本開催 | 2019年8月23日(金) ― 9月23日(月) |
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芸術監督 | 鈴木忠志 |
会場 | 利賀富山県利賀芸術公園 黒部宇奈月国際会館「セレネ」 前沢ガーデン野外ステージ(YKK) |
ロシア開催 | 2019年6月15日(土) ― 12月15日(日) |
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芸術監督 | ヴァレリー・フォーキン |
会場 | サンクトペテルブルク 国立アレクサンドリンスキー劇場 他 |
シアター・オリンピックスとは
鈴木忠志、テオドロス・テルゾプロス、ロバート・ウィルソン、ユーリ・リュビーモフ、ハイナー・ミュラーら、世界各国で活躍する演出家・劇作家により、1994年にギリシアのアテネにおいて創設された国際的な舞台芸術の祭典。
芸術家同士の共同作業によって企画されることを特徴としていて、世界の優れた舞台芸術作品の上演のほか、次世代への教育プログラムも実施される。
1995年のギリシア(デルフォイ、アテネ、エピダウロス)を皮切りに、日本(静岡)、ロシア(モスクワ)、トルコ(イスタンブール)、韓国(ソウル)、中国(北京)、ポーランド(ヴロツワフ)、インド(ニューデリーなど)と8カ国で開催されてきたが、2つの国で共同開催されるのは今回が初めてとなる。
創設の経緯
シアター・オリンピックスの構想は、1990年代の初め、当時、演出家・鈴木忠志が主催していた国際演劇祭で公演するために来日していたギリシアの演出家・テオドロス・テルゾプロスにより提案されました。
当時、テオは危機感を抱いていた。米ソの冷戦が終わって、これからは希望が持てる世界になるのではないかと思っていたら、逆に東欧だとか、ギリシアに近いあちこちで民族紛争が噴出していた。そうしたなかで、演劇人は連帯して人類の未来のために頑張らなくてはいけない、と。こうした感覚というのは、やはり日本にいると鈍くなります。鈴木は、多くの海外の人たちともつきあっているので、そうした問題意識も実感としてわかるところがあったのだと思う。
(斉藤郁子<初代シアター・オリンピックス国際委員会事務局長・故人>「SCOTの軌跡を語る」より)
テオドロス・テルゾプロスと鈴木忠志の呼びかけにより、アメリカのロバート・ウィルソン、ドイツのハイナー・ミュラー、ロシアのユーリ・リュビーモフ、イギリスのトニー・ハリソン、スペインのヌリア・エスペル、ブラジルのアントゥネス・フィーリョが参加して1993年の夏、ギリシアのデルフォイにおいてシアター・オリンピックス国際委員会が創設されました。そして1995年、アテネ、デルフォイ、エピダウロスで第一回シアター・オリンピックスが開催されました。
国際委員の共同作業により、シアター・オリンピックス憲章がつくられ、詩人でもあるトニー・ハリソンの発案で“Crossing Millennia(千年紀を過ること―過去と未来の相互交流)”というサブタイトルを定めました。また、ロゴは美術家でもあるロバート・ウィルソンによってデザインされています。
芸術監督挨拶
情報伝達システムが全世界的に整備されるようになったために、世界各国の人々は自国以外の文化をも身近に感じ、知ることができるようになりました。あらゆる物事を、その現場で経験し、人間が共存して生きていく時の知恵を養ってきた時代と比較すると、その現場に立ち会うこともなく、物事を知り理解できるというこの変化は、まったく新しい環境が人間を取り囲んでいるのだといってよいと思います。この世界的に共通する環境を成り立たせるために、人類は非動物性エネルギー<石油、電気、原子力>の力を利用してきました。この傾向は今後ますます拡大し、人類の未来の共存のために必要で不可欠なこととなりつつあります。
しかしながら、この便利で素早く人間を結びつける非動物性エネルギーの力に頼りすぎることは、たいへん危険な一面をもっています。それは人間の個人個人の身体のなかにある動物性エネルギーの豊かな可能性を忘れさせたり、衰弱させてしまうからです。人類の文化はこの動物性エネルギーの洗練した使い方によって花を開き、果実を実らせてきました。たとえば舞台芸術、演劇やダンスやオペラなどは映画やテレビと違って、まったくこの動物性エネルギーの使い方の素晴しさによって人類の財産になっているのです。これはスポーツも同じです。舞台芸術やスポーツはそれが行われるその場に立ち会い、人間をよりよく理解し愛する基礎を作り上げるものです。ですから、非動物性エネルギーを駆使した情報伝達のシステムがどんなに拡大し、生活を維持していくために不可欠なものになろうとも、舞台芸術やスポーツのもっている価値を忘れたり、ないがしろにすることは、人間が人間の存在理由を否定することになりかねません。むろん、動物性エネルギーを鍛錬し、洗練して使い、それを皆で楽しむ楽しみ方は民族や地域によって違います。しかし、それぞれの民族や地域はその楽しみ方の違いによって、その文化的な個性と存在理由を主張しているといってもいいのです。非動物性エネルギーの使用量が増大し、生活の仕方が画一的になりつつある今こそ、舞台芸術のような文化的な事業を通して、民族や地域の共通性と違いを同時に知ることは、人類の未来への共存のために大きな貢献をすることになります。
舞台芸術が力強く存在することは、21世紀を生きる人間にはげましを与えることになると、われわれシアター・オリンピックス国際委員は確信しています。
芸術監督 鈴木忠志
シアター・オリンピックス憲章
第1条
本事業は、名称を「シアター・オリンピックス」とし、サブタイトルを〈千年紀(ミレニア)を過(よぎ)ること〉、〈過去と未来の相互交流〉を意味する「クロッシング・ミレニア」とする。
デルフォイの野外劇場
第2条
国際委員会を組織し、「シアター・オリンピックス」に関するすべての事業の計画及び運営は、この委員会の責任によって行う。
国際委員会のメンバーは以下のとおり。
テオドロス・テルゾプロス(委員長/ギリシア)
ヌリア・エスペル(スペイン)
アントゥネス・フィーリョ(ブラジル)
トニー・ハリソン(イギリス)
ユーリ・リュビーモフ(ロシア)
ハイナー・ミュラー(ドイツ)
鈴木忠志(日本)
ロバート・ウィルソン(アメリカ)
第3条
国際委員会の委員は事業計画についての提言にとどまらず、芸術家である全委員が、共同作業によって事業を責任を以て実施することを本組織の特徴とする。
第4条
国際委員会は、原則として年1回開催するものとする。
「カルテット」
(テオドロス・テルゾプロス演出)
第5条
国際委員会への新たな委員の入会には、委員1名の推薦及び、委員の3分の2の同意を必要とする。
「トロイアの女」(鈴木忠志演出)
第6条
国際委員会の委員長は、テオドロス・テルゾプロスとする。
第7条
シアター・オリンピックスの本部事務局は、ギリシアのアテネにおく。
第8条
当面のシアター・オリンピックスは、原則として、国際委員の国において開催する。
シアター・オリンピックス開催国の委員が、芸術監督の責務に当たる。
開催国の委員(芸術監督)は、シアター・オリンピックスのテーマ及びプログラムを立案し、委員会に計画書を提出し、同意を得るものとする。
「クラップの最後のテープ」
(ロバート・ウィルソン演出)
第9条
各開催国は、シアター・オリンピックスの成功を期するため、開催国の実情に即した委員会を組織する。この組織はその国の文化を代表する人々によって形成される。
利賀山房
第10条
国際委員会は、公式ロゴマークを決定し、全てのシアター・オリンピックス及び関連事業に、この公式ロゴマークを使用する。
第11条
シアター・オリンピックスの事業内容は、以下のとおりとする。
- a.数年ごとにシアター・オリンピックスを開催し、優れた作品の上演ならびにシンポジウムやワークショップを行う。
- b.上記に加え、演劇の考え方、作品の創造、教育等のプログラムを持続的に各地で行う。
- c.歴史的な舞台芸術作品の保存・記録。戯曲が著作として残るように、演出や実際に上演された作品を記録するシステムを確立する必要がある。
- d.舞台芸術家の国際的なネットワークの形成。
- e.若い芸術家への訓練、支援。
「マラー/サド」
(ユーリ・リュビーモフ演出)
1994年6月18日
ギリシア、アテネにて
国際委員会創立メンバー
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テオドロス・テルゾプロス
Theodoros Terzopoulos
(委員長)
ギリシア
1945~ -
鈴木忠志
Suzuki Tadashi
日本
1939~ -
ロバート・ウィルソン
Robert Wilson
アメリカ
1941~ -
ヌリア・エスペル
Nuria Espert
スペイン
1935~ -
アントゥネス・フィーリョ(故人)
Antunes Filho
ブラジル
1929~2019 -
トニー・ハリソン
Tony Harrison
イギリス
1937~ -
ユーリ・リュビーモフ(故人)
Yuri Lyubimov
ロシア
1917~2014 -
ハイナー・ミュラー(故人)
Heiner Muller
ドイツ
1929~1995
開催記録
シアター・オリンピックス 第1回~第8回
開催国 | 開催地 | テーマ | 開催期間 | 芸術監督 | 参加国 作品数 |
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第1回 (1995) |
ギリシア | デルフォイ、 アテネ、 エピダウロス |
Tragedy | 8月19日~8月27日 | テオドロス・テルゾプロス | 7カ国 9作品 |
第2回 (1999) |
日本 | 静岡 | Creating Hope 希望への貌 |
4月16日~6月13日 | 鈴木忠志 | 20カ国 42作品 |
第3回 (2001) |
ロシア | モスクワ | Theatre for the People |
4月21日~6月29日 | ユーリ・リュビーモフ | 32カ国 97作品 |
第4回 (2006) |
トルコ | イスタンブール | Beyond the Borders |
5月11日~6月6日 | テオドロス・テルゾプロス | 13カ国 38作品 |
第5回 (2010) |
韓国 | ソウル | Sarang : Love and Humanity |
9月24日~11月7日 | チェ・チリム | 13カ国 48作品 |
第6回 (2014) |
中国 | 北京 | Dream | 11月1日~12月25日 | 劉立濱 (リュー・リービン) |
22カ国 46作品 |
第7回 (2016) |
ポーランド | ヴロツワフ | The World as a Place for Truth |
10月14日~11月13日 | ヤロスワフ・フレット | 14カ国 86作品 |
第8回 (2018) |
インド | ニューデリー、 他16都市 |
Flag of Friendship |
2月17日~4月8日 | ラタン・ティヤム | 35カ国 465作品 |